幸 運 な 3 週 間

新型インフルエンザの世界的流行で、多くの学校が海外語学研修を中止や延期、行き先の変更などを行った中、本学ではぎりぎりまで検討された結果、決行となりました。結果的には何のトラブルもなく、大きな成果をあげることができました。
 私は、過去2回の渡豪経験で、治安もよくあの美しい国に機会があればまた行きたいと願っていたので、12項目の理由を挙げ、今回の引率を希望しました。過信は禁物ですが、新型インフルエンザに関しては、次第に暖かくなる季節であること・ブリスベンは医療体制が整っていること・クイーンズランド大学に荒木田岳先生が在外研究中でいらっしゃることなどの理由で、もし罹患してもきちんと対応ができるものと予想していました。医療体制に関しては、国際結婚して現地にいる友人から事情を聞いていたので、全く心配しておりませんでした。また、4年前ゴールドコーストに1週間滞在した時、クイーンズランド大学を見学せずに帰国したことが心残りだったことも拍車をかけました。
1.初日
 オーディトリウムで待機していたら、「福島大学のみなさんは336室へ移動してください」というアナウンスがありました。オリエンテーション、エントリーテスティング、キャンパスウォークなどで無事初日終了。先ず、大学に慣れることに必死。電話のかけ方、バスの乗り方など、日本にいたら何の不自由もないことから学習。無事にホームステイ先に帰れるかなあと心配する人も。この日学生証やパスワードが渡されなかったので、翌日請求。しかし、2日目に渡されたものの全員のパスワードが作動しなかったので、結局コンピュータが使用できることになったのは3日目から。図書館や留学生センターに多くのコンピュータが設置されているので、とても便利でした。
2.授業
 9:00〜10:30、11:00〜12:30、13:30〜15:00の90分3コマ。ビッキー先生とローズ先生が曜日により交代で担当。教師の体調不良や職員のストライキの時は臨時に他の教師が担当。授業は丁寧で、英語のレベルを上げてほしいという感想も出ましたが、1週目は様子をみることになり、スタッフにはその旨伝えました。初め、自己紹介や人探しなどゲーム感覚で進められ、「スポーツ」がテーマの時にはDVDを鑑賞した後グランドに出て実際にフットボールゲームをしたりで、活動的でした。初日に、「明日は授業中日本語を言わないように」と注意されましたが、9月11日、オーストラリアの学生との交流会では、「黙っている人や下を向いている人がいない」と、ビッキー先生にほめられました。ローズ先生からも、「とても真面目でいい子たちですね」と言われました。
3.アクティビティ(シーワールド、ローンパイン、マウンティンレイクス)
 ブレアドライブのバス停に集合してバスで出かけ、帰路はインドロピリーや大学など、各自希望の場所で降車しました。
 9月3日はゴールドコーストにあるシーワールドでアシカやイルカのショー、北極熊などの海洋生物を見学して3時まで過ごしました。4日午後、シティウォーキングツアーに出かけ、4人くらいのグループに分かれ、UQの学生さんがミュージアムなどに案内してくれました。8日午後はローンパインコアラ保護区でシープドッグが羊を囲い込むドッグショーを見たり、コアラやカンガルーに触れ合う体験をしました。鳥やディンゴウォンバット、クロコダイルなどたくさんの動物が飼育されていました。5本足のカンガルーに驚き、よく見たら、1本はお腹の袋に顔をつっこんだ赤ちゃんの足でした。10日はブリスベン川の上流にあるダムの近くで1時間ほど乗馬体験をしました。野生のコアラを見たり、かえったばかりの鳥のヒナを見たり、ボードに焼印を押したり、蹄鉄投げを楽しんだり、パンを焼いたり、記念の植樹をしたりで、一日野外活動を満喫しました。
4.ムスリムのお祈り
 午後の授業のため教室に戻ると、中から20人くらいの黒ずくめのムスリムの女性がぞろぞろ出て来るではありませんか。びっくりして尋ねると、「お祈りの部屋としてこの部屋を使用することが、大学から認められている」と言うのです。荒木田先生が確認してくださったところ間違いなく、そのことを私たちに連絡してなかったのでした。スタッフに、「荷物が置いてあるし、授業の前後に自習や打ち合わせをしたい学生もいるので、何とかしてほしい」とお願いしたところ、「何人部屋を使う予定か?」と具体的に聞かれ、「それはわからない」とやりとりがあった後、結局はお祈りの部屋が変わりました。
5.ストライキ
 前日予告があり、いつものように8時前にバスを降りたら、数人の人がビラを配っていました。混乱はありませんでした。職員の待遇改善と授業の中身の充実を理由にストライキをするため、アクティビティに変更になり、他大学の学生と一緒にサンシャインコーストに出かけました。
6.週末
 1週目は全員でゴールドコーストに1泊2日で出かけました。荒木田先生のアドバイスで、ホテルに予約し、ローマストリートから列車で行きました。サーファーズパラダイスを思いっきり走ったり、Qデッキの展望台やウォーターマークホテルの部屋で心ゆくまで語り合ったりして、渡豪後1週間の緊張がほぐれたようでした。翌朝の日の出の瞬間も感動的でした。
 2週目は各々計画を立て、“世界で2番目に大きい砂の島”モートン島に自分たちで予約して1泊2日楽しんだグループ、シティでリバーフェステフィバルに参加したグループなど、それぞれ有意義に過ごしたようです。私はリバーフェステフィバルに参加しました。日中はシティのいたるところでミュージシャンたちがパフォーマンスし、夜は大勢の人がサウスバンクに集まり、花火大会を楽しみました。オープニングとエンディングは飛行機が轟音をあげて飛び立ち、フェステフィバルを盛り上げました。
7.私の日常
 朝7時25分にバスに乗り、8時着。図書館でインターネットを操作。授業開始・終了前後に教室に行き、問題がないか確認。引率教員控室や図書館などで報告書を書いたり、他大学の引率教員と談話したり学内散策をしたりで、3時までは何事かあった時に対応できるように待機。時にはフェリーでシティに出かけることも。ランチは学内の食堂で、ビーフやラザニア、寿司や焼きそばなど、10ドル前後で満腹。帰りはシティやインドロピリーを散策したり、写真を現像したりショッピングしたりして、7時半頃帰宅。ホームステイ先には私の他に2人の滞在者がいて、6時半頃食事をするので私は遅れて夕食。その後4人で9時頃まで会話するのも英語の勉強。ホストマザーは28年前ニュージーランドから移住してきたイギリス人。5人の娘さんを育てあげ、一人暮らしをしている教師。
8.最終日
 修了式が厳かにとり行われ、一人ずつ終了証書を受け取り写真撮影。みんな、やり遂げた喜びにあふれていました。髪の毛が伸びて、顔つきも変わりました。フェアウェルランチは豪華で、「今までで一番美味しいお料理!」と叫んだ人もいました。
9.帰国
 あっというまの3週間でした。家に帰ったらゆっくりお風呂につかりたい、ご飯と味噌汁と海苔と納豆が食べたい、ひたすら眠りたいと、みんなの心はもう福島。治安のよいところであれば、何とか生活できる自信がついたようです。
 今年は新型インフルエンザの心配はありましたが、
・それでも行きたい学生が15名集まったこと
・事故や病気、事件など、トラブルがなかったこと
・荒木田先生が在外研修中であること
・福大の交換留学生だったケント君が来年度の交換留学生を紹介してくれ、交流できたこと
・天候に恵まれたこと(3週間の間に雨が3回降りました。ひどい雷雨の時もありました。)
など、いくつもの幸運に恵まれたと思います。今年中止になったら、来年度は就職活動のため参加できないと言った人もいました。
 この貴重な体験を多くの福大生が共有できるとよいと思います。